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■野口レポート

No.239 相続での預貯金は可分債権 (平成28年8月)

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相続での預貯金は遺産分割協議をすることなく、相続人が法定相続分で取得できる「可分債権」です。
しかし、実際には遺産分割協議で取得しているのがほとんどです。また、銀行も可分債権だからと言って、ハイそうですかと応じてくれません。相続人全員の同意を求めてきます。
可分債権として引き下ろすには、銀行や、ゆうちょ銀行を相手に預貯金返還請求の訴訟を裁判所に起こさなければなりません。
知人からある老婦人の相続の相談を受けました。第3順位の相続です。相続人は残された奥様Aさん(82歳)と、ご主人の兄弟姉妹です。Aさんとは全く面識のない代襲相続人や、音沙汰のない行方不明者など、20名近い相続人が関東一円に散らばっています。
自分の手にはおえないと丁寧にお断りしました。数日後Aさんが直接お見えになり、頼る人が誰もいないので何とかお願いできないかと嘆願されてしまいました。すでに某司法書士事務所へ依頼しているが、2年間何の動きも連絡も無くそのままとのことでした。
預貯金は凍結されており、生活費も底をついてきたとのことです。事情を聞いてしまったので断るわけにはいきません。先ずは司法書士の依頼を取り下げ、預けてある書類を戻してもらいました。


遺産は借地権付建物とそれなりの預貯金です。Aさんの法定相続分は4分の3です。Aさんの今後の生活費を確保することが優先です。遺産分割の話し合いで取得するのが理想ですが、この状況で全員からはんこをもらうには何年かかるか分かりません。生活費もすでに底をついてきています。
可分債権である預貯金を法定相続分(4分の3)で取得するしかないと判断し、弁護士をコーディネートすることになりました。
銀行と、ゆうちょ銀行を相手に預貯金の返還請求の訴訟を起こしました。銀行は某メガバンクでしたがなかなか応じてくれず、判決まで求めてきました。判決は当方の主張が入れられ払戻請求が認められ、Aさんの老後の生活費を確保することができました。
借地権は未分割のままです。だが、Aさんが住む分には差しつかえありません。気の毒なのは地主です。借地人が20数名に枝分かれしてしまい、Aさんが他界すればその兄弟姉妹(代襲者を含む)が更に借地人となります。借地は塩漬け状態となり何もできません。
ご主人が生前に専門家に相談し遺言を作成していたら何の問題も起きませんでした。兄弟姉妹には遺留分の権利がありません。遺言があれば全財産はAさんに渡ります。地主にしても借地人が枝分かれせず、借地の交渉事が可能となったはずです。
昨今、相続での可分債権(預貯金)については、遺産分割の対象に含めるとの民法改正の動きや、最高裁大法廷でも争いがあり、相続での預貯金債権の扱いが今後どうなるかは不透明です。

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