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■野口レポート

No.246 56年目の橋渡し (平成29年3月)

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※こちらのレポートは過去のレポートのリニューアル版です。

「お産に耐えた母のお腹から生まれてくる。そして誰もがスッポンポン。」だから兄弟姉妹なのです。
まして2人姉妹なら、姉と呼べるのも妹と呼べるのも、この広い世界にたった1人だけです。もし、親が残した財産をめぐり2人が争ってしまったら、これほどの不幸はありません。
知人を介し相談を受けました。相談者は女性のAさん(83歳)です。18年前に母親が亡くなり、まだ相続手続をしていません。
遺産は老朽マンション1室(1K風呂なし)だけです。相続人は56年間疎遠で父親の異なる妹のBさん1人とのことでした。
調べてみるとBさんの最後の住所は山形県になっていました。連絡を乞う手紙を出しました。ダイレクトメールと間違えられゴミ箱へ捨てられないように《○○様相続の件》と明記します。最初に出す手紙は大事です。書き方次第でその後に影響します。
1週間ほどでBさんから電話が入りました。事情の説明にお伺いしたい旨を伝え、山形へ出向きました。Bさんは71歳です、姉が56年間連絡をくれなかったこと、母親が亡くなったのを知らせてくれなかったこと、誤解も重なり何を今更と立腹しています。
このまま放っておいたら、子どもや孫の代まで憂いが残ってしまうと、Bさんに重ねて協力をお願いしました。


Bさんに代償金を払いAさんがマンションを相続することで合意しました。だが、その後がまとまりません。
地方から見れば東京の不動産です。価値の認識にズレが生じ、代償金の額で意見が合いません。しかたなく時間を置くことにしました。半年後(適切な間)にBさんに電話を入れてみました。このままでは母親が成仏できないからと一歩譲ってくれました。
だが、姉には会いたくない、ハンコは押すから野口さん1人で来て欲しいとのことでした。この相続問題の本質は56年も疎遠であった異父姉妹の縁を戻して差し上げることです。この機を逃してしまったら二度とチャンスはないでしょう。
ようやくBさんに理解いただきAさんと一緒に山形に行きました。タクシーを降りるとBさんが門前に打ち水をしていました。こちらが姉さんですよ、こちらが妹さんですよ、と紹介しました。
何といっても血のつながりです。戸惑いながらも嬉しそうなBさんの表情が印象的でした。56年振りに感動の再会です。
相談を受けてから終わるまで1年かかりました。わずかな財産でしたが母親が残してくれたから、56年目にして姉妹の縁が戻ったのです。天国の母親も喜んでいることでしょう。
手間暇を考えたらできない仕事でした。だが、見えない報酬が「徳」となり天に蓄えられ、神様は帳尻を合わせにやってきてくれます。
やってよかった、いってよかった、小さな相続案件でしたが、大きな仕事を成し遂げた気分で山形を後にしました。

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