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■野口レポート

No.251 認知症と成年後見制度 (平成29年8月)

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ある息子さんから電話を頂きました。母親は認知症で施設に入所し判断能力がありません。息子さんが銀行の融資を受け、母親の土地を使用貸借(無償)し、その上に家を建てています。母親の土地には銀行の抵当権(物上保証)が設定されています。
息子さんはローンを完済し、この土地に設定されている抵当権を外したいと銀行に相談しました。ここまでは普通の話です。
腹が立つのはこの相談を受けた銀行員の対応です。「分かりました。お母さんは認知症なので抵当権を外すには、成年後見人(以下後見人)をつける必要があります。明日、当行の系列の弁護士を向けるから、後見人になってもらって下さい。」この行員は後見人がつくとどうなるか、お客様にリスクを全く説明していません。
電話を受けて「チョッと待った!」とストップをかけました。すぐに銀行に断ってくださいと言いました。土地売買などの事情があるならば抵当権を外さなければなりません。だが目的はその土地の使用貸借です。抵当権など何の問題もありません。急いで外す必要はなく、母親が亡くなってから外せば足りることです。
もし、電話をくれなかったら、息子さんは行員の言うことを真に受け、母親に後見人をつけてしまったことでしょう。


一度後見人をつけてしまったら、生涯外すことができません。母親の一切の財産は後見人が管理し、今まで息子さんが容易にできたことが何もできなくなります。
後見に対し正しい知識を欠き、安易に後見人をつけてしまい、失敗したと後悔している人もいます。よほどの事情が無い限り、つけなくて済むならば、後見人はつけないほうが良いと思います。
最近は相続で多くぶつかるのが認知症の問題です。被相続人が高齢なら配偶者も高齢です。認知症を発症している可能性があります。
認知症の発症や、重度の精神上の障害など、相続人が判断能力に欠けている場合は、後見人をつけなければ遺産分割がでません。
後見人は原則として遺産分割で、被後見人の法定相続分を確保しなければなりません。また、相続手続きが終わったからといって、後見人を外すことができません。認知症の母親に渡った財産は生涯にわたり、後見人が管理することになります。
あちらでも信託、こちらでも信託、巷では民事信託が流行っています。認知症対策にも使われています。だが、民法で可能なことはできる限り民法で対応したいものです。手短に確実にできる方法として遺言による認知症対策があります。
全財産を遺言で相続人に指定しておけば、遺産分割協議は必要なく後見人も不要です。ただし、信託も遺言も被相続人になる人が認知症になってしまってからではできません。認知症対策は手遅れにならぬよう早めの対応が必要です。

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