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■野口レポート

No.263 子供の目を持つ (平成30年8月)

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某新聞に数年前まで連載されていた4コマ漫画「コボちゃん」は毎回楽しく読んでいました。作者の「植田まさし」さんは、自分の素直な感性を2人の子供(コボちゃん・ミホちゃん)に置き換え、物事の本質を4コマで見事に表現しています。相続問題の本質をつかむには固定観念にとらわれることなく子供の目を持つことです。
40歳独身の長女Aさんからの相談です。父親が亡くなり、相続人はAさんと母親の2人です。遺産は家族が住んでいる自宅の土地建物です。母親は重度の認知症で施設に入っています。相続税は基礎控除以下なので課税はありません。
友人から10ケ月以内に相続手続きをしなければと言われ、どこへ行ったらよいのか、誰に相談したらよいのか悩んでいました。どうも相続税申告期限と相続手続きを混同しているようです。
相続税は相続開始後10か月以内に申告し、現金一括納付が原則です。遺産が基礎控除以下であれば申告義務はありません。あとの遺産分割や不動産などの相続手続きに期限はありません。
固定観念を持った大人の目で見てしまったら、「認知症の母親に成年後見人をつけ遺産分割をし、相続手続きを進めましょう。」とアドバイスしてしまったかもしれません。


固定観念を捨てると、問題の本質が見えてきます。「このまま放っておきましょう」これが私のアドバイスでした。話を傾聴しAさんの目的はこの家に住み続けることだと分かったからです。
放っておくと2人の遺産未分割共有状態です。だが、今まで通り住み続けるには何の問題も影響もありません。
母親が亡くなれば相続人はAさん1人です。その時に相続手続をし、自宅を自分の名義にすれば済むことです。
この案件は相続税の課税がない、他に相続人がいない、預貯金がない、このような条件が揃っていたからのアドバイスです。
もし、状況が異なれば母親に成年後見人をつけ遺産分割を成立させ、10ケ月以内に相続税の申告をしなければなりません。
高齢社会も進展し被相続人は高齢です。被相続人が高齢なら配偶者相続人も高齢です。認知症を発症している人もいます。相続だけに後見人はつけられません。一度つけてしまうと生涯外すことができません。親族は配偶者の金銭を一切動かせなくなります。職業後見人に依頼したら生涯報酬を払い続けなければなりません。
こんな事態を防ぐためにも、遺言を作成してください。遺言で全ての財産を相続人に指定しておけば遺産分割は不要です。
こんな簡単な相続対策をしておけば、認知症の配偶者がいても後見人をつけることなく円滑な相続税申告が可能です。
相続問題は子供の目で本質をつかみ、大人の目で進めていくことが必要です。相続実務はふたつの目を持つことが大切です。

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