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■野口レポート

No.162 二度童子 ~子供たちへの手紙~ (平成22年3月)

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老いて意思能力を失った人のことを、今は認知症と言っています。東北では、このようなお年寄りのことを、「おじいちゃん、おばあちゃんは、子どもにかえってしまったんだなぁ~」というので、二度童子(にどわらし)と言っているところがあります。北国らしい思いやりのある温かな言葉です。
認知症を発症したお年寄りの行動は赤ちゃんと似ています。赤ちゃんは、おしっこを漏らしても、ミルクをこぼしても、誰からも文句をいわれません。成長過程だからニコニコして見ていられます。
ところがお年寄りの「二度童子」となると、実際に直面する現実の厳しさが心での受け容れを難しくしてしまいます。
在宅介護の現場は、すさまじいものがあります。実際に親を介護し、体験した人でなければその苦労は分かりません。
ある夫婦が寝たきりの父親を介護しています。下着を換えシーツを換えます。息つく暇もなく父親はまた便意を訴えます。「ビニールビニール早く」ご主人が声を荒げます。だが間に合いません。素手で受けた下痢便が指の間から滴り落ちます。これが介護の現場です。
介護の先には必ず相続が待っています。他の兄弟姉妹に介護の苦労は分かりません。また、分かろうともしません。そして、遺産分割では当然のように権利を主張してきます。


相続アドバイザーのA氏がいます。認知症を発症し、排尿、排便、徘徊をする父親を、最後まで在宅で介護し看取った人です。
最初は何で自分がこんな目にと思ったそうです。だが、介護を続けていくうちに、「ありがたい」と思えてきたそうです。父上は旅立つ寸前まで、身を持って大切な何かを教えてくれたのでは……。
そのA氏にある詩を教えていただきました。「手紙~親愛なる子供たちへ~」です。この歌を聞いた時、涙が止まらなかったそうです。
「年老いた私が 今までの私と違っていたとしても どうかそのまま私のことを理解してほしい」こんな書き出しで始まります。
子は親になり、親はいずれ老いていきます。健康寿命が尽きれば、いずれ「二度童子」となるでしょう。意思能力もなくなり、記憶も失せていきます。身体も思いのままにならなくなります。
食べ物をこぼすこともあるでしょう。下着を濡らすこともあるでしょう。足も衰えてくるでしょう。そんなとき叱らないでください。あなたが赤ちゃんの時と同じです。そんなあなたを親は愛情こめて付き添ってくれました。
今度はあなたが付き添う番です。あなたの人生の始まりにしっかりと付き添ってくれたように、親の人生の終わりに少しだけ付き添って差し上げてください。
この手紙を何度も何度も読んでください。歌を聴いてください。親の恩に気付いてください。旅立ったあとに争いなどしないでください。円満相続は親へできる最後の恩返しです。

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