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■野口レポート

No.163 勘定と感情の借地問題 (平成22年4月)

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借地人「ここに住まなくなったので、借地権を買い取ってくれませんか。」 地主「買えだと、とんでもんない。使わなければ無償で返すのが当たりまえだろう。」 
借地人「ならば仕方ありません。他の人に売ります。」 地主「売れるものなら売ってみろ、裁判でも何でもやってやろうじゃないか。」
地主と借地人がこんなやりとりをしたあと、借地人さんが私のところへ相談に見えました。
旧法借地権が複雑なのは度重なる改正で、本来は債権である土地賃借権を、物権である所有権に限りなく近づけてしまったことにあります。日本で唯一、借りたものを返さなくていい法律です。
借地権の譲渡や建替えは、地主の承諾が得られなければ、借地非訟手続きで裁判所が代諾許可を出してくれます。だが、地主と揉めている借地をあえて買う人がいるかどうか……。
また、買主が銀行から融資を受けるには地主のハンコが必要となります。揉めていたらハンコなど押す地主はいません。代諾許可での借地権譲渡は現実には難しいものがあります。
借地人さんの相談を受け、取りあえず地主さんのところへ行きました。地主さんは借地人さんに対し怒り心頭です。銭勘定に人の感情が絡んでくる借地は相続問題とよく似ています。


そんな折、ある住宅メーカーが提案してきました。借地権を買い取りたいとのことでした。投資家からお金を集め、アパートを建て家賃収入を配当するとのことです。ファンドを組めば銀行から融資を受ける必要はなく、地主さんのハンコもいりません。
しかし、このまま住宅メーカーに借地権を譲渡してしまったら、その道のプロが商売に徹し入ってきます。地主さんはいやな思いをするでしょう。借地人さんにしても後味の悪さが残ります。
借地人さんに譲渡価格を譲れるところまで譲っていただきました。地主さんの家族に状況を説明し、説得をお願いしました。地主さんも一歩譲ってくれ借地権を買い戻してくれることになりました。
ここで予期せぬことがおこりました。借地人さんに不都合が生じ、引っ越しが延びてしまったのです。せっかく合意したのに借地を引き渡すことができなくなりました。
少ない脳ミソと知恵を絞り、ある提案をさせていただきました。
(1)地主さんが借地権付建物を借地人さんから買い取る。(2)地主さんの所有になった建物を、借地人さんが更新のない定期借家契約で借り、地代相当額を家賃として払い、引っ越し準備が整うまで引き続き住む。(3)この二つの契約を同時に行う。
1年後、無事に引き渡しは終了し、双方から感謝されました。
犬猿の仲であった地主さんと借地人さんでしたが、最後は互いが譲ってくれました。相続や借地は法律問題にしてしまわないで、少しずつ譲りあい、話し合いで解決することが大切です。

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