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■野口レポート

No.230 借金や連帯保証も相続財産です (平成27年11月)

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不動産や預貯金などは「正の財産」です。借金や保証債務は「負の財産」です。当然に負の財産も相続財産になります。だが、「負の相続」を理解した上で、借金や連帯保証をする人はいません。
借金の遺産分割は銀行に対抗できません。相続人全員が法定相続分の割合で相続します。相続対策として父親が借金でマンションを建てました。5年後に亡くなり3億円の残債があります。相続人は3人です。遺産分割で長男がマンションと借金を相続しました。
もし長男が返済不能になったら、銀行は他の相続人に法定相続分での返済を求めてきます。ただし、長男が1人で借金を相続することを銀行が同意してくれたなら、他の相続人はこの借金から離脱(免責的債務引き受け)することができます。
だが、銀行が同意してくれるとは限りません。また、状況によっては相続人全員が連帯し3億円を引き受ける(重畳“ちょうじょう”的債務引き受け)を求められることもあります。
怖いのは保証債務です。保証人の地位も法定相続分で相続します。親が3,000万円の連帯保証をしています。相続人は子が3人、親が亡くなった瞬間に1人1,000万円の連帯保証人です。この保証債務は、主たる債務者が破綻し初めて出てくる時限爆弾です。


中小零細企業を営んでいたAさんが亡くなりました。Aさんは現在の会社を一代で築きました。長男は経営能力に乏しく、会社はAさんで成り立っていました。
相続人は長女と長男と二女の3人です。長男が自社株など会社の資産を全て相続し経営を引き継ぎました。姉妹は長男に譲り、遺産分割で100万円の代償金(判子代)を受け取りました。
会社の借金は個人のものではありません。よって姉妹には及びません。しかし、ほとんどの中小零細企業の社長は、会社の借金に対し「個人保証」をしています。この連帯保証は個人のものです。相続人全員が法定相続分で相続してしまいます。
①会社の借金を社長(親)が個人保証している。②会社の経営は親の力で成り立っていた。③後継者の長男は経営能力に乏しい。
相続を主導した会計事務所がこれらを見きわめ、姉妹には家庭裁判所で相続放棄をしてもらい、100万円は遺産分割をしないで、贈与で渡すとの発想があったなら問題は起きなかったと思います。
その後、会社は破綻し経営に無関係な姉妹に保証債務が伸し掛かってきました。遺産分割で100万円を相続してしまった2人は相続放棄はできません。今まで幸せだった二つの家庭が揺らぎます。
先代社長(故人)の個人保証は相続人全員に及びます。経営にタッチしない相続人は保証を引き継がないとの交渉も現実には難しいでしょう。これらを踏まえ後継者選びは私情に流されず、適性を冷静に見定め、経営能力のある人物を選ぶことが大切です。

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