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■野口レポート

No.328 二度童子 (令和6年1月)

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老いて意思能力を失った人のことを、今では認知症とよんでいます。東北地方のある地域では、このようなお年寄りのことを「おじいちゃん・おばあちゃんは、子どもにかえってしまったんだなぁ~」というので、二度童子(にどわらし)といっているところがあります。何とも温もりのある言葉ですね。
認知症を発症したお年寄りの行動は赤ちゃんと似ています。赤ちゃんは、おしっこを漏らしても、ミルクをこぼしても、誰からも文句をいわれません。成長過程だからニコニコして見ていられます。
ところがお年寄りの「二度童子」となると、実際に直面する現実の厳しさが心での受け容れを難しくしてしまいます。
在宅介護の現場は、すさまじいものがあります。実際に親を介護し、体験した人でなければその苦労は分かりません。
Aさん夫婦が寝たきりの父親を在宅介護しています。下着を換えシーツを換えます。息つくまもなく父親はまた便意を訴えます。「ビニールビニール早く」ご主人が声を荒げます。が、間に合いません。素手で受けた下痢便が指の間から滴り落ちます。これが現場です。
介護の先には必ず相続が待っています。この相続を引き受けました。Aさん夫婦に感謝し、介護の労をねぎらう兄弟姉妹は誰もいません。遺産分割協議では当然のように権利を主張してきました。


野口塾に、NPO法人相続アドバイザー協議会理事長の平井利明さんがいます。認知症を発症し、排尿、排便、徘徊をする父親を、在宅で介護し最後を看取った人です。ご本人はこの体験が相続アドバイザーとして成長する大きな糧になったと言っています。
最初は「何で自分がこんな目に」と思ったそうですが、介護を続けていくうちに「ありがたい」と思えてきたそうです。
平井さんからある詩を教えていただきました。「手紙~親愛なる子供たちへ~」です。詩を聞いた時、涙が止まらなかったそうです。
「年老いた私が 今までの私と違っていたとしても どうかそのまま私のことを理解してほしい」こんな書き出しで始まります。
子は親になり、親はいずれ老いていきます。健康寿命が尽きれば、いずれ「二度童子」となるでしょう。
食べ物をこぼすこともあるでしょう。下着を濡らすこともあるでしょう。足も衰えてくるでしょう。そんなとき叱らないでください。あなたが赤ちゃんの時と同じです。そんなあなたを親は愛情こめて付き添ってくれました。
今度はあなたが付き添う番です。親の恩に気付いてください。あなたの人生の始まりにしっかりと付き添ってくれたように、親の人生の終わりに少しだけ付き添って差し上げてください。
いずれ賞味期限が終わり、枯れていく自分にも「二度童子」となる日がくるかも知れません。健康が保たれてこそ、初めて長寿の意味があります。長生できるなら健康寿命を願うばかりです。

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