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■野口レポート

No.332 心に残る相続案件《1》 (令和6年5月)

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この仕事を30年もやっていると、苦労すればするほど、心のなかに残る相続案件があります。
祖母、父母、長女、長男、二男が同居している家族がいます。長女のA子さんが小学生の時に両親が離婚しました。母親は2人の男の子を連れて家を出ていきました。父親も再婚し家を出ていってしまいました。祖母は残された小学生のA子さん(孫)を自分の養子にし、立派に育てあげました。
やがて成長したA子さんは、祖母の食事の世話や家事、病院への送り迎え、散歩の付き添いなど、かいがいしく世話をしました。
20歳になったA子さんは、祖母の晩年を介護し、最後を看取りました。A子さんにとっては育ててくれた祖母への恩返しでした。父親や叔母は母親の介護にかかわりませんでした。
縁あってこの相続のお手伝いをすることになりました。祖母は自筆の遺言を残していました。遺言の検認で相続人全員が家庭裁判所(家裁)に呼ばれ、私もA子さんに付き添いました。
開封した遺言の大まかな内容です。「もし財産が残ったら孫のA子にあげてください。A子は私の食事から家事、お医者さんへの送りむかえ、散歩など、本当に良くしてくれました。何より一緒に暮らしてくれて寂しい思いをしないですみました。もし財産が残ったら全部A子にあげたい。


贅沢もせず旅行にもいかず、一所懸命働いて貯めたお金です。私につくしてくれた者にあげたい。長男のB男も長女のC子もどうぞ
私の気持ちを分かってください。」
祖母が思いを込め一生懸命に書いた自筆証書遺言です。が、不備があり無効となりました。しかし付言としての価値は十分あります。
はたして付言が2人の心を動かすことができるかどうか。
しばらくしてB男さんとC子さんの代理人を名乗る弁護士(O先生)から、A子さんへ遺留分減殺請求(現在は遺留分侵害額請求)の内容証明が届きました。弁護士は遺言が無効であろうが、有効であろうが、時効を止めるため取りあえず減殺請求をしてきます。
A子さんには弁護士に依頼するお金がありません。私は弁護士ではないので代理人にはなれません。相手方のO先生に会いにいきました。当方の事情を説明し、私がA子さんのメッセンジャー(使者役)としてO先生との間を取りもつことはできるかと聞きました。当時のことです、使者ならいいでしょうと受け入れてくれました。
年月が経過し何とか決着にこぎつけました。祖母(実母)の切なる願いは聞き入られず、義務を果たさず権利は主張する父親や叔母からは、思いやりを感じることはありませんでした。
数年後、試練をのりこえ頑張っているA子さんから、うれしい知らせをいただきました。結婚をするとのことです。A子さんの人生の一部に、ほんの少しお付き合いさせていただいた一人として、幸せを願わずにはいられません。

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