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■野口レポート

No.180 満身創痍のおじいちゃん (平成23年9月)

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暑いなか封書を手に杖をつき、おじいちゃん(Aさん84歳)が相談に見えました。封書は、熊本県の債権者代理人からのものです。Aさんが相続人であること、被相続人には債務があること、そして相続を承認するか、放棄するかの判断を求めています。
高齢のAさんには何がなんだか分かりません。近所の人に相談したら、あそこへ行ってみたらと言われたそうです。
同封の相続関係図を見ると、Aさんの祖父は再婚しています。被相続人は亡き母親の異母兄弟Bさんです。今風にいえば「おひとりさま」で、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。AさんはBさんの存在も、顔を見たこともありません。
祖父の子(兄弟姉妹・異母兄弟姉妹)は全て亡くなっており、相続人はAさんを含め高齢の代襲相続人が18人です。ほとんど相続放棄し、他の相続人も放棄を希望しているとのことです。
もし、Aさんが放棄するなら、代理人が相続放棄の申述は一緒にやってくれるとのことでした。だが、そのあとは熊本家庭裁判所と書類のやりとりが必要となります。
専門家に頼めばそれなりに費用が発生します。話を聴いてみるとAさんは、大きな病を患い、今も新たな病をかかえ満身創痍です。家計も厳しく費用を工面する余裕がありません。


これも何かの縁と思い、お手伝いすることにしました。Aさんの使者役として代理人とやり取りをし、委細を確認しました。
Aさんは代理人からの通知で、自分が相続人であることをすでに知りました。相続人であると知った時から3ヵ月を過ぎると相続を承認したとみなされ相続放棄はでません。
Aさんには一度相続放棄が受理されてしまうと、取り消すことができないことを十分に説明し了解を得ました。
あとは熊本家裁とのやり取りです。文書は代筆し署名は本人にお願いしました。家裁からの照会に対し回答書を送りました。しばらくして相続放棄が受理されたとの通知がありました。これでAさんは最初から相続人でなくなり債務は相続せずに済みます。
家裁に相続放棄申述受理証明書を請求し手元に届きました。この証明書がAさにとって水戸黄門の印籠となります。
封書のやり取りを4回したので、80円切手×4枚=320円をAさんに請求しました。おじいちゃんは太っ腹でした。ポケットから1000円札を取り出し、「つりはいらない」と一言。
このような人助けは、組織のなかではできません。相続に特化した一介の不動産屋だからできる「我がまま」だと思っています。
ありがたいことに、最近は「あそこへ行ってみたら」と言われ相談に見えるお客様が増えてまいりました。
この相続放棄もちょうど1年前の案件でした。そのあとおじいちゃんは見かけません。 元気でいてくれるとよいのですが………。

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