■野口レポート
No.204 「相続税制改正」恐れることなかれ (平成25年9月)
「相続税大増税時代到来」「相続税大衆課税に」「相続大増税と節税対策」「相続税節税のおさえどころ」等々……。
これらを謳い文句に、ハウスメーカー、建築会社、金融機関などが主催する無料の相続セミナーが盛んです。なかには国産牛肉のプレゼント付セミナーもあります。なぜ無料か疑問を持たない参加者で会場は満員です。高い牛肉につかなければよいのですが……。
「資産が4,200万円以上あれば課税対象に」「一般サラリーマンを狙う増税」「せまる大増税から大切な資産を守れ」等々……。新聞、テレビ、経済誌、週刊誌などのメディアも、相続税制改正による増税不安(書けば売れる)をあおっています。
ねじれ国会と大震災で先送りになっていた相続税制改正案が国会を通り決定し、平成27年1月1日の相続から適用されることになりました。今回の改正のなかで注目されているのは、相続税基礎控除の40%引き下げです。
相続人は子が3人とします。現行では定額控除5,000万円、相続人控除1人に付1,000万円で合計8,000万円です。
改正後の控除は定額3,000万円、相続人1人に付600万円で、合計4,800万円です。これを超えると課税の対象となります。
お客様「大変だ、大変だ!改正後は我が家も課税対象になってしまう。」 私「ちょっと待った!相続税がいくら課税されるか調べたのですか?」 お客様「そんなの調べてないよ。とにかく大変だ!我が家の財産は7,000万円だ。基礎控除を2,200万円も超えてしまう。」 私「心配いりませんよ。仮に課税(小規模宅地の特例不可の場合)されても220万円です。節税対策は必要ありません。」
庶民にとって220万円は大金です。だが、払えないお金ではありません。節税対策でなく遺言の作成などによる遺産分割対策を優先し相続争いを予防しておきましょう。
また、億単位の相続税を納める大地主さんは、基礎控除の40%引き下げなど大勢には影響しません。10か月以内に相続税を現金一括納付できるよう、こちらも納税対策を優先いたしましょう。
完全分離型二世帯住宅も要件を満たせば、来年以降は小規模宅地特例の対象となり節税効果が生じます。だが、分離と言っても屋根はひとつ。こんなはずでは……、嫁姑など新たな問題も出てきます。
賃貸併用住宅も先の小規模宅地特例の改正で節税効果は減りました。また、今は全室賃貸でも苦戦する時代です。併用住宅は生涯空室(住居部分)をかかえるということです。3O年一括借り上げも3O年固定の家賃保証ではありません。
相続対策の目的は「相続人の幸せ」でなければいけません。はたして借金してまでも節税対策をする必要があるのか、目をつむり、耳をふさぎ、今一度冷静に考える必要があります。
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