■野口レポート
No.207 遺言の検索と検認 (平成25年12月)
自筆証書遺言のいいところは、いつでもどこでも簡単に作ることができ費用もかかりません。そして、遺言を作ったことや内容を知られることもありません。
だが、素人がつくるので法的要件の不備や遺言の内容が不明確なため、せっかく作ったのに使えない遺言も数多くあります。そして、紛失や改ざんの危険性もでてきます。
また、自筆証書遺言は要件を満たし法的に有効な遺言であっても、家裁(家庭裁判所)の検認を受け、遺言書に検認証明書を添えなければ相続手続きができません。
ご主人が亡くなり高齢の奥様(Aさん)からご相談を受けました。Aさん夫婦には子がおりません。愛妻家のご主人は自筆証書の遺言を残していました。
遺言の相続で一番先にすることは、公正証書遺言の検索です。遺言は複数出てきた場合は、日付が新しいものが有効です。日付のないものや確定できない遺言が無効になるのはこのためです。
相続人様から、遺言検索と遺言検索システム照会結果通知書受領の委任状をとり、近くの公証役場に出向きます。平成元年以降に作成した公正証書遺言なら日本公証人連合会に登録されています。
検索し遺言があれば、遺言作成日、証書番号、遺言作成役場、公証役場の所在地と電話番号、作成公証人が出てきます。
後付けの公正証書遺言が無いことが確認できたら、自筆証書遺言の検認の申し立てをします。相続人様から遺言書を預かれば、保管者として申し立てができ、検認の場へ同席することができます。
相続人は配偶者のAさん、ご主人の兄弟姉妹と代襲相続人の甥姪達です。家裁の待合室で顔を合わすと「おばちゃん!ご無沙汰しています。お元気ですか!」など、なごやかな雰囲気でした。
時間になると全員が審判廷に案内されます。審判官から「検認は証拠保全作業で、有効無効を判断するものではありません」との説明があり、そのあと開封します。
遺言を取り出し内容を確認し、相続人へ内容の確認を促します。書記官が本人の字かどうか形式的に聞いてきます。そして審判官は退席し検認作業は終了します。開封した遺言は「全財産を妻に相続させる」との内容でした。待合室での雰囲気とは打って変わり、審判廷を出た時は誰も口をききませんでした。
この時の空気はAさんにとって辛いものがあります。このような場合は検認の必要のない公正証書遺言の作成をすすめます。
また、審判廷とはいえ雰囲気は法廷です。なれない依頼者(相続人)は緊張し心細いと思います。相続アドバイザーなどが遺言保管者として申立人となり、同席し傍に寄り添って差し上げれば依頼者も心強いのではないかと思います。
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