■野口レポート
No.226 業務独占と弁護士法 (平成27年7月)
動物や他の生き物は死ねばそれで終わりです。だが人間は亡くなると相続が開始するからやっかいです。
葬儀を済ませると悲しみに浸る暇もなく、やらねばならないことが山積します。借金取立人(税務署)も容赦なくやってきます。なかでも一番の難題は遺産をどう分けるかの分割協議です。
遺産分割の仕方には次の三つの方法があります。
①指定分割 ⇒ 遺言で誰に何を相続させるのか、遺産や相続割合を指定しておく。法定相続に優先します。
②協議分割 ⇒ 相続人全員の話し合いでどう分けるか決める。全員(多数決は無)が合意すればどんな分け方をしても有効です。
③調停・審判による分割 ⇒ 遺言もない、話し合いでも決まらない ⇒ 家庭裁判所の調停 ⇒ 調停不成立 ⇒ 審判 ⇒ 審判官は法定相続分を変えることはできません。判決は法律どおりです。
近年の相続は相続人層の推移とともに権利意識が強くなってきています。また、自分に都合のよい付け焼刃の知識(インターネット)だけが頭に残り、相続問題をより複雑にしてしまいます。
私はできる限り、遺産分割の話し合いにオブザーバー(潤滑油)として立ち会うようにしています。
ただし、相続アドバイザーは弁護士ではありませんので、やってはいけないことがあります。
①説得すること、②指示すること、③交渉すること、④誘導すること。また、遺産分割の立ち会いで報酬は頂戴できません。
弁護士以外の者がかかわる場合は、ここは十分に慎重を期し、俗にいう「非弁」にならないよう対応することが肝要です。
グレーゾーンにどこまで踏み込んでよいのか悩ましいのが業際問題です。弁護士法や税理士法は士業の利益を保護するためにあるのではなく、国民の人権や財産が無資格者の無知や悪意によって侵されることのないようにするのが目的です。ゆえに、弁護士業務や税理士業務は資格を保有している者しか行うことのできない「業務独占」になっています。
しかし、弁護士法に必要以上に怯えてしまったら、相続のお手伝いなどできません。弁護士法を正しく理解し、信念を持ってお客様をサポートし、結果として不動産など本来の業務につながり、そこでしっかり報酬を頂戴する、これが理想の形です。
また、相続は法律だけでは解決できない部分もあります。弁護士先生だけではそこまで手がまわりません。相続アドバイザーだからできることもあります。弁護士法の本来の趣旨を理解し、相互が補い協力し、円満かつ円滑な相続を実現し、お客様の経済的利益だけでなく、精神的利益も守って差し上げる、そんな理想の相続ができる時代が来ることを願っています。
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