■野口レポート
No.232 相続実務に必要な二つのセンス (平成28年1月)
相続アドバイザーなど相続の実務家には「強さ」と「優しさ」に加え、二つの「センス」が必要です。
強さと優しさがなければ相続の仕事はできません。強さがベースにある人は、強さのなかに一筋の優しさを持つことです。優しさがベースにある人は、優しさのなかに一筋の強さを持つことです。
コーヒーのなかに入るミルクは、一滴入っただけで全体の味がまろやかになります。強さのなかに入る優しさ、優しさのなかに入る強さ、まさにコーヒーのなかに入る一滴のミルクです。
温厚に見えても、ここぞというときに毅然とした一筋の強さを持っている人は魅力を感じます。魅力のない人間に相手は心を開いてくれません。上手くいかない原因は他人の責任でなく、一番身近にあることに気付くことが大切です。
次は二つのセンスです。一つは「本質を見抜く」目を持つことです。舞台(相続)に、かぶりついてしまったら本質は見えません。
本質を見抜くためには、法律や税金や財産を一度頭から外し、無の世界から相手の幸せを考えてみることです。
本質が見えたなら、あとは方向を誤らないことです。方向を決めることは相続対策や相続アドバイスで最も重要です。
二つめは「ほんの少しのお節介」です。あるおばあちゃんが相談に見えました。20年前に父親が亡くなり、土地の相続手続きをしていません。他の相続人はおばあちゃんが相続することで同意しています。司法書士が登記すれば済む問題と思われました。
おばあちゃんは一人暮らしです。話を聴いていくと、ご主人と離婚していること、土地上の建物は別れたご主人との共有名義(2分の1)であること、2人の子供は事情があり、おばあちゃんの面倒を見るのが難しいことがわかりました。
相手の幸せを心から考えると本質が見えてきます。この相続案件の本質は「本人の老後の生活」です。相続した土地を将来換金し、老人ホームの費用に充てる必要があります。土地を売るには建物をおばあちゃんの単独名義にしておく必要があります。
別れた元ご主人に会いにいきました。事情を丁寧に説明し、建物の持分を贈与(築42年で非課税)していただきました。
これでいつでも土地を換金し、老人ホームに入所することが可能となります。売却する時は私が仲介することを約束し一件落着です。おばあちゃんからは「神様だよ」と言われました。
大きなお節介は余計なお節介になります。だが、小さなお節介は相続人の幸せのために必要です。今回の案件も単に相続手続きで終わってしまったら「モノ」を売っただけです。ほんの少しのお節介をすることで「価値」を売ったことになります。モノを売るか、価値を売るかでは大きな差となります。
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