■野口レポート
No.244 親の財産は親のために使う (平成29年1月)
家族の状況や財産構成によっては「子供に財産を残さないで、親のために使う」これが最善のアドバイスと思うことがあります。
相続の適切なアドバイスには、遺産がどのような経過で築かれてきたのか、相続財産のルーツを知ることも大切です。
80代のAさん夫婦が相談に見えました。働き者のご主人と内助の奥様と素晴らしいご夫婦で、私も昔からよく存知あげています。
Aさんは、相続など金持ちの問題で自分には関係ないと思っていました。ところがテレビを見て財産が少ない人ほど、相続争いを起こすことを知り心配になりました。自分も高齢になったし、遺言を作りたいとの相談でした。
遺言の目的は子供達に円満に財産を相続してもらいたいとのことでした。話を傾聴してみると財産は自宅とそれなりの預貯金です。Aさんと奥様が力を合わせ築いた財産です。子供2人は遠隔地に住んでおり、状況から親の世話をするのは無理です。
相続相談は問題の本質を見抜くことが大切です。当事者は問題の本質など分かりません。法律と財産を一度頭から全部外し、無の世界から、相手の幸せを考えてみると本質が見えてきます。本質が見えれば何をすればよいのかが分かります。
この問題の本質は子供達の円満相続ではありません。高齢のAさん夫婦の老後です。Aさん夫婦に「私の有する一切の財産を〇〇(配偶者)に相続させる」との遺言を互いに作成していただきました。
互いが元気のうちは現在の自宅に住んでいればよし、一人になったら自宅を売却し、老人ホーム入居の費用に当てること、預貯金は老後の糧とすることを提案しました。
Aさん夫婦は子供達を立派に育てあげ、親の役目は十分果たしました。「子供に財産を残そうと思わないでください。自分達のために使うことを考えてください。」これが私のアドバイスです。もし最後にお金が残ったら子供達が法律通りに分ければいい話しです。
相続が難しいのは、日本人の財産構成が現在の民法と税法に合ってないところにあります。
民法は「均分相続」です。遺産が全部現金なら分けるのは簡単です。ところが多くの財産は分けにくい不動産です。
税法は「10ケ月までに現金一括納付」が原則です。これも全部現金なら即一括払いです。いくら取られても半分近くも残ります。
お上が財産構成に合わせ民法や税法を変えてくれるのか? そんなことは間違ってもありません。なら、財産構成を民法と税法に合わせていく必要があります。これも大事な相続対策です。
今は親が子に頼れる時代ではありません。子供を育てあげた後は「子に残すのではなく自分達のために使う」、もし残ったら子供達がありがたく相続させてもらう、そんな時代がきています。
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