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■野口レポート

No.276 正直に生きる (令和元年9月)

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25年前の話になります。建設会社と税理士から、廃業したGS跡地に借金をして賃貸マンションを建てると相続対策になりますよと提案を受けました。税理士からはこのままでは相続税で土地を失うことになりますよと言われました。
今でこそ相続のプロとして仕事をしていますが、当時は相続に関して全くの素人です。建設会社と税理士の話を疑うべくもありませんでした。節税目的の安易な借金は禁物だと後で知ることになります。
借金に節税効果は生じず、借金で得た現金で評価の低い賃貸マンションを建てるから相続税が減るのです。ここを取り違えないことです。
15年後に大規模修繕の時期がきました。上記施工会社の見積りと外装工事会社の見積りでは比べものになりません。外装工事会社へ大規模修繕をお願いしました。
修繕中に施工会社の手抜き工事が発覚しました。◎打ちっぱなしのコンクリートの穴をモルタルで埋めずにタイルを張っています。◎さわることのできない場所のコーキングを手抜きしています。◎外から見えないパイプスペースには持ち帰るべきゴミや廃材が捨ててあります。
実際に仕事をするのは下請けや孫請けでしょうが、見えなければいい、分からなければいい、それにしてもあまりにお粗末な仕事です。
何で正直に仕事ができないのでしょうか、もし施工会社に大規模修繕を依頼したらこれらの手抜き工事は隠されてしまったことでしょう。


いっとき世間を騒がせた耐震偽装の一級建築士にしてもしかりです。資格に人格が伴っていなかったことで、どれだけの人がマイホームの夢を砕かれ不幸になってしまったか、騙しなどせず正直に生きていたなら、この設計事務所も立派に発展していたと思います。
ささやかれていた話ですが、施工不良問題が表に出てしまい、窮地に立っている会社があります。大手だからと100%信頼し建築を依頼した大家さんはたまったものではありません。己の利益を優先しお客様や社会を欺いた代償は決して安くはないでしょう。
タレントで女優のK子さんが、小学校時代の社会見学の様子をエッセイに書いています。訪問先のゴミ処理場見学に先立ち、先生から注意がありました。「皆さん、静かに見学しましょう。汚くても臭くても決して臭いなどと、言ってはいけません。」当時のゴミ処理場のことです、現場に入ったら臭いのは当たり前です。
通りかかった処理場のおじさんが声をかけてくれました。「どうや、臭くてたまらんやろ?」子供たちは一斉に臭くないといいました。
「こんなに臭いのに、お前らの鼻はアホとちゃうか」と言って、おじさんは行ってしまいました。それ以来、K子さんは自分に正直に生きようと心に決めたそうです。
金太郎飴はどこを切っても同じ顔が出てきます。裏表も損得もありません。私も一貫し正直に生きてきました。今があるのはそのお蔭です。
ごまかしや、口のうまさなどが、世の中まかり通ってしまう時代です。
背伸びせず、見栄もはらず、人も騙さず、「正しくまっすぐに生きる」こんな楽ちんな生き方はありません。

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