■野口レポート
No.130 公正証書遺言に保険を掛ける (平成19年7月)
《絶対に遺言が必要な人》
孫や嫁など、相続人以外に財産を渡したい人。籍を入れていない事実婚の人。
《遺言が必要な人》
配偶者が認知症の人。子どもがいない人。自宅で家業を営んでいる人。親の介護をしている人。
二世帯住宅の人。異母(父)兄弟がいる人。相続人に多重債務者がいる人。
《遺言があったほうがいい人》
家系を維持したい人。事業承継者になる人。財産が少ない人。姉多くして長男が末っ子である人。
相続の現場では、遺言さえあったらと思うことが少なくありません。
逆に無いほうがいい遺言もあります。
ある地主さんの遺言を拝見しました。某信託銀行が遺言執行者に指定されています。無いほうがいい遺言の典型です。
相続税納税を考慮していない、相続人の生活も考えていない、何が目的か分からない、これでは相続人は幸せになれません。
相続が開始し、この遺言を一方的に執行されてしまったら、相続人はたまったものではありません。
相続人全員が円滑に相続税を納められること、各人の経済状態や家族構成も考慮し、相続後の生活も見据え作りたいものです。
地主さんには作り直すことを提案しました。財産が同じなら新しい遺言を作れば前の遺言は効力を失います。
公証役場の公証人さんは、遺言の内容にアドバイスはできません。
遺言は目的にあった設計が大切です。ヒヤリングを繰り返し遺言の目的をつかみます。各財産の性質を把握し、相続税の納税なども考慮し、早くて数ヶ月、半年以上かかることもあります。
遺言者は高齢の方が多いです。この時の最大のリスクは、プランが完成する前に相続が発生してしまうことです。
長男(本家)に器量(譲る心)があればの話しです。公正証書遺言作成にあたり、保険を掛けておくことにしています。遺言に保険!?そんな保険、生命や損保では扱っていません。
おじいちゃんに「1、遺言者が所有する一切の財産を長男○○に相続させる。2、この遺言の執行者を長男○○に指定する」最短の文面で自筆証書遺言を作ってもらいます。
これ位なら高齢のおじいちゃんにも書けるでしょう。法的不備で無効にならないよう、目の前で書いてもらいます。
万一プラン作成前に相続が発生してしまったら、相続税納税などを考慮し、プランに添った遺産分割の話し合いをします。本家が一歩譲ればほとんど合意に至るでしょう。譲っても話し合いがまとまらなければ、黄門様の印籠(遺言)を出し、再度話し合いをします。
おじいちゃんの書いた遺言は、正式な公正証書遺言が出来るまで保険の役割をします。公正証書遺言が完成すれば、リスクを担保していた自筆証書遺言は、効力を失いその役目を終えます。
遺言の目的は「相続人の幸せ」です。
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