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■野口レポート

No.339 心に残る相続案件《2》 (令和6年12月)

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「お産に耐えた母親の、同じお腹から生まれてくる。そして誰もがスッポンポン。」だから兄弟姉妹と呼べるのです。
まして2人姉妹なら、姉と呼べるのも妹と呼べるのも、この広い世界にたった1人だけ、親が残した財産をめぐり2人が争ってしまったら、これほどの不幸はありません。
知人を介し相談を受けました。相談者は女性で高齢のAさんです。10数年前に母親が亡くなり、まだ相続手続きをしていません。
遺産は老朽マンション1室(1K風呂なし)だけです。相続人は数10年間疎遠で父親の異なる妹のBさん1人とのことでした。
調べてみると妹さんの最後の住所は新潟県になっていました。連絡を乞う手紙を出しました。ダイレクトメールと間違えられゴミ箱へ捨てられないように《○○様相続の件》と明記します。最初に出す手紙は大事です。書き方次第でその後に影響します。
1週間ほどで妹さんから電話が入りました。事情の説明にお伺いしたい旨を伝え、新潟へ出向きました。妹さんは姉が数10年間連絡をくれなかったこと、母親が亡くなったのを知らせてくれなかったこと、誤解も重なり何を今更と立腹しています。
このまま放っておいたら、子どもや孫の代まで憂いが残ってしまうと、妹さんに重ねて協力をお願いしました。


姉がマンションを相続し、その代償として妹さんが代償金を受け取ることで合意しましたが、その後がまとまりません。
老朽マンションとはいえ、地方からすれば東京の不動産です。価値の認識にズレが生じ、代償金の額で意見が合いません。しかたなく時間を置くことにしました。半年後に妹さんに電話を入れてみました。このままでは母親が成仏できないからと譲ってくれました。
姉には会いたくない、判子は押すから野口さん1人で来てほしいとのことでした。この仕事の目的は数10年も疎遠であった異父姉妹の縁を戻して差し上げることです。この機を逃してしまったら二度とチャンスはないでしょう。ここは一歩も譲れません!
ようやく妹さんに理解いただき姉と一緒に新潟に行きました。タクシーを降りると妹さんが門前に打ち水をしていました。こちらがお姉さんですよ、こちらが妹さんですよ、と紹介しました。
やはり血のつながりです。戸惑いながらも嬉しそうな妹さんの表情が印象的でした。まさに数10年目の橋渡しです。
相談を受けてから終わるまで1年半かかりました。わずかな財産でしたが母親が残してくれたから、姉妹の縁が戻ったのです。天国の母親も喜んでいることでしょう。
手間暇を考えたらできない仕事でした。「徳」この見えない報酬が天に蓄えられ、神様は帳尻を合わせにやってきてくれます。
やってよかった、いってよかった、小さな相続案件でしたが、大きな仕事を成し遂げた気分で新潟を後にしました。

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