■野口レポート
No.169 野口流相続コンサルティング (平成22年10月)
もう6・7年前になるでしょうか、ある老婦人が聞き伝えで私のところへ見えました。30年前に父親が亡くなり、そのまま何もしていないので相続の手続きをしてほしいとの相談でした。
相続人はご自身と妹さんが1人です。遺産は40坪ほどの自宅土地で、姉が相続することで妹さんとは合意しているとのことでした。
司法書士をコーディネートし、土地の相続登記をすれば済んでしまうと思いきや、傾聴していくと上の建物は離婚した元ご主人との共有(持ち分2分の1)であることが分かりました。
おばあちゃんは一人暮らしです。妹さんも高齢で姉のお世話は出来ません。最後に頼れるのはお金です。いずれは相続した土地を換金し、老人ホーム等の老後の費用に充てる必要があります。
将来、この土地を円滑に売却するためには、共有を解消し建物をおばあちゃんの単独所有にしておく必要があります。
別れた元ご主人に会いに行ってまいりました。事情を丁寧に説明し、建物の持ち分を元妻に贈与してくださるよう心からお願いしました。誠意が通じ贈与契約書に印を押してくれました。
建物は築40数年、かつ2分の1の移転なので贈与税の負担はありません。おばあちゃんからは「神様だよ」と言われました。
亡くなった人が残した財産はどのような経過で築かれてきたか、相続財産のルーツを知ることは相続コンサルで最も重要です。
また、法律と常識は一致するとは限りません。相続の相談や実務での対応は、法律や財産を一度頭から外してみることが大切です。法律で頭が固まってしまったら、本質が見えてきません。
5年前に第3順位(相続人は配偶者の奥様Aさんとご主人の兄弟姉妹)の旧家の相続にかかわったことがありました。ご主人の兄弟姉妹が一方的に遺産分割協議書を押しつけ印を求めてきました。
法律で権利を主張したら相続争いとなり、勝っても負けても不幸になります。Aさんには相続財産のルーツ(本家筋)と、自分の幸せ(明るく楽しく暮らすこと)を考えていただきました。
先日Aさんに久々にお会いしました。満面に笑みを浮かべ幸せそうでした。5年前のアドバイスは間違いではなかったと確信できました。当時の話をするたびに私に手を合わせてくれます。
70年間の遺恨を断ち切った話は146号で紹介しましたが、そのBさんにもこのレポートをお届けしています。Bさんは封筒に手を合わせてから開封してくださるそうです。
主宰している野口塾(相続実務学校)塾頭の中條氏にこの話をしたら「塾長もいよいよ教祖になりましたね」と言われました。
野口流相続コンサルティングは宗教ではありません。相続人様の幸せを守ることを信条に、ひたすら相続の本質を求め、苦労しながら歩いてきた、15年間の実務のなかで創りあげた理念です。
現代社会と遺言の新たな役割 (平成22年9月) ≪前へ次へ≫ 増え続ける相続放棄 (平成22年11月)
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