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■野口レポート

No.206 法律を頭から外してみる (平成25年11月)

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法律は社会秩序を維持するために国が定めた規範です。常識は普通の一般人が持っている通常の知識と感覚です。万人に平等であるべき法律ですが、知ると知らないでは大きな不平等が生じます。また、法律が常識や幸せと一致するとは限りません。
相続の実務やアドバイスでは、法律を一度頭から外し、相続人様の人生や幸せを考えてみることも必要となります。
知人の紹介でご相談者Aさんが見えました。ご主人のBさんは一流商社に勤めているエリートサラリーマンです。だが、不幸にして急逝されました。
Bさんは土地資産家の跡取り息子です。女系の母親が早く亡くなり、長男のBさんが広大な自宅敷地と多くの不動産を相続しました。
ところがAさん夫婦は子宝に恵まれませんでした。Bさんの相続人は配偶者のAさんとBさんの父親です。Bさんが母親から相続した不動産は全部父親に相続させろと、義兄弟姉妹が連日のようにハンコを押せと迫ってきます。
もしAさんが亡くなったら相続人はAさんの両親もしくは兄弟姉妹になります。つまり相続した不動産は全部A家へ行ってしまいます。これを防ぎたいのはB家の心情です。


Aさんは法律相談や弁護士のところを転々としました。「3分の2の権利がありますよ。」出てくる答えはどこも同じでした。
義父母に仕えながらご主人を支えてきた想い。連日ハンコを迫る義兄弟姉妹。法律相談にいけば3分の2の権利があると言われる。Aさんは精神的に追い詰められ、眠れない日が続いています。
Aさんにお話しさせていただきました。法律を前面に出し戦えば勝てるでしょう、だがB家とは生涯いがみあうことになる。財産(不動産)のルーツをたどればB家が代々引き継いできたものである。相手はそれ以外の財産は相続してよいと言っている、ひとり身のAさんが暮らしていくには足りる財産である。
50歳になったAさんの人生はこれからです。「目に見える財産でなく自分の幸せを取りましょう。」とアドバイスしました。この一言でAさんは我に返りました。
「ハンコを押しました。」数日後、吹っ切れた明るい声が電話の向こうから聞こえてきました。
私がお会いした時には、Aさんはウツの扉を開け、すでに片足を突っ込んでいる状態でした。一度ウツの世界に入ってしまったら、いくら財産を使っても元に戻れる保証はありません。ここは背中を掴みグッと引き戻して差し上げることが大事です。
法律で頭が固まってしまったら、目に見えない財産を見落としてしまいます。相続人様の大切な人生(幸せ)を守って差し上げるためには、法律を頭から外してみることも必要です。

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