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■野口レポート

No.128 尊厳死宣言公正証書 (平成19年5月)

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小学校低学年のときでした。野口君すぐ帰りなさい、担任の先生に言われました。急いで家に帰ると、祖父の枕もとに身内が集まっています。脈をとっていたお医者さんが、祖父の腕を静かに下ろし「ご臨終です」と一言。
何が起きたかすぐ理解はできませんでした。だが、場の雰囲気から、厳粛な瞬間であると感じたことをおぼえています。誰もが在宅で臨終を迎えられた時代でした。
島根県隠岐島で看取りの家「なごみの里」を運営している柴田久美子さんがいます。人としての尊厳を守りながら、旅立ちの日を迎えることができるようにと、お年寄りのお世話をしています。柴田さんは、臨終の迫ったお年寄りを抱きしめて送ります。
柴田さんの講演を聴きました。不覚にも涙を抑えることができませんでした。笑顔が素敵な天使のような女性です。「抱きしめて送りたい」、旅立つお年寄りにとって柴田さんは正に最後の神様です。
誰にでも必ず訪れる「死」は決して恐ろしいものではないと、なごみの里を旅立つお年寄りは教えてくれるそうです。
柴田さんは問いかけます。
抱きしめて送られた方がいますか。
命のバトン次に伝えていますか。


「人の尊厳と延命処置」重く難しいテーマです。延命装置を外したことで、刑事事件に発展してしまうこともあります。
私達夫婦は、回復の見込みがない延命治療は行なわないと、お互い約束しています。
しかし、その状態が生じれば自分の意思を伝えるすべはありません。口約束はしていても、実際にその場面に接したら家族はどうでしょうか、嫁の立場ならなおさらです。
事実実験公正証書があります。貸金庫の開披に公証人が立ち会い証明力のある証拠保全や、製造過程や技術などを保全し、知的財産権を侵害から守る等の公正証書です。
尊厳死宣言公正証書も事実実験です。先日作成してきました。
こんな書き出しで始まります。「私の病気が不治であり、かつ、死が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わる方々に、自らの死の在り方について、次の通り希望を申し述べます。」
延命処置の実行は単に死の過程を延ばすだけと診断された場合、処置は行なわない。行為の一切の責任は自分にあり、医師などを犯罪調査や訴追の対象としない等々、これらの旨を公正証書の書面で残します。ちなみに作成費用は14,000円でした。
相続は譲るが勝ちです。だが、死は譲ることができません。一日一日に感謝し、迎えがきたら厳かに尊く旅立ちたいものです。
「最期の1%が幸せならば、その人の人生は幸せなものに変わります。」 マザーテレサの言葉です。

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