■野口レポート
No.111 再発バブル警戒警報 (平成17年12月)
汗することを忘れ、玄人や素人までが入り乱れ土地投機や株投資そしてバブル崩壊、後に残ったのは資産価値が激減した不動産と不良債権の山でした。わずか10数年前の話です。
分譲マンションの完成在庫(売れ残り)が増えています。誰がみても供給過剰です。しかし、止まることのできないデベロッパーは土地を買い続けています。
争奪戦でマンションや戸建の用地が値を上げています。つられ周辺に不自然な地価上昇がおきています。
先のバブルで学習したはずの銀行が、またぞろ不動産開発や不動産ファンドにお金のバルブを開いています。過当競争の歪から生じた耐震強度偽造問題など、いつもツケを払うのは国民です。
10年ほど前に、ある早朝勉強会で芳賀則人氏(現NPO法人・相続アドバイザー協議会:理事長)の話を聞きました。“地価下落を誘発する10の要因”です。これら要因が除かれない限り土地は反転(上昇)しない。あまりにも明確な芳賀氏の持論に“目からウロコ”の思いでした。
“路線価がすべてではない” 芳賀氏は相続税申告の土地評価に鑑定評価の必要性をいち早く説いた、当時売り出し中の不動産鑑定士(相続の鑑定では日本一)で、転業まもない私には雲の上の人でした。芳賀氏は一貫し土地はまだ下がると言い続けています。
「地価は5年で半分に」この衝撃的タイトルは井上明義氏の持論(日経新聞10/19)です。井上氏はバブル最盛期の80年代に、その後の地価下落をいい当てた人です。今回もその根拠を冷静かつ客観的に語っています。カネ余りが地価上昇につながっている点はまったく同じで再発バブルと呼んでいます。
井上氏の予測が実現するかはわかりません。しかし、冷静に考えてみると、一部での地価上昇は、IT企業(はやり)のオフイス需要による大型開発、異常なまでのマンション供給など、適正な需要と供給での地価上昇とは思われません。
用地を求めるデベロッパーや大手戸建業者からは日に何本も電話が入ってきます。すでに最盛期(末期症状)か……? 私のような下町の不動産屋でさえ何かおかしいと感じます。
地主は土地を売却しカネ持ちになり、相続対策(錯覚)での借金を返してしまうチャンスです。借金に節税効果はありません。全額返済してしまっても相続税は増えません。
下るときは遅いが、上るときは早いのが金利の性質です。もし金利が上がったら不動産の需要(買い)は止り、再発バブル崩壊の引き金に…。再発バブルが崩壊すれば土地は確実に下がります。
歴史は繰り返します。しかし、繰り返してもらいたくない歴史もあります。不透明な景気要因と再発バブルが重なり、世の中は不気味な様相を呈してきました。
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