■野口レポート
No.201 借金と保証債務の怖さを知る (平成25年6月)
ある弁護士さんから届いた通知を持ってAさんが相談に見えました。「あなたはBの相続人です。別紙の通りBはあきらかに債務超過です。つきましては相続放棄をするか、もしくは事実上の放棄をしてください。事実上の放棄をされる方は同封の書類に実印を押し印鑑証明をつけ返送してください。」このような書面と一緒に相続分皆無証明書が同封されていました。
素人には相続放棄と事実上の放棄の違いなど分かりません。事実上の放棄は相続分の放棄です。ゼロの財産を相続したことになり、相続人の地位は残ります。もし、Bさんに新たな借金や保証債務があれば、Aさんは法定相続分で相続してしまいます。
相続放棄は最初から相続人でなくなります。不動産や預貯金などプラスの財産も相続できませんが、借金や保債務などマイナスの財産も一切相続しません。
この通知でAさんは自分が相続人であることを知りました。相続放棄は知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。
相続対策のほとんどはプラスの財産に対するものです。借金をかかえたまま相続が開始したらどうなるか、借金にも相続対策が必要であると、内藤雄氏(故人)はいつも警鐘をならしていました。
「財産いらない」と、遺産分割協議書にハンコを押し、自分は相続放棄したと言っている人がいます。これも相続放棄ではなく相続分の放棄です。相続人の地位は残り、借金や保証債務があれば法定相続分で相続してしまいます。
怖いのは連帯保証人です。保証人は主たる債務者(借りた本人)が返済しなければ、先ず本人に請求しろ、本人の財産を調査し差し押さえろと言えます。しかし、連帯保証人にはこの催告と検索の抗弁権がありません。自分が借りているのと同じです。
保証のほとんどは連帯保証人です。相続人はこの連帯保証を法定相続分の割合で相続してしまいます。借金は相続が開始した時点で判明し放棄か承認か判断できます。だが、保証債務は主たる債務者の破たんや返済不能で初めて表に出てきます。相続した後に大きな保証先が破たんしたら、もう相続放棄はできません。
地主さんは借金相続のことをあまり考えていません。相続対策と言われ大きな借金を平気でしてしまいます。そして、家族が連帯保証を取られます。この借金で破たんしたら、連帯保証している相続人は相続放棄しても借金から逃げることはできません。
土地有効活用で現金を得ることは大切です。健全な借金は時には必要です。だが、借金は相続の時にはゼロになっていることが理想です。相続税対策として借りた借金を、生前に返してしまうことも立派な相続対策であると思ってください。ちなみに借金を全額返済してしまっても、相続税が増えることはありません。
相続対策の目的は相続人の幸せ (平成25年5月) ≪前へ次へ≫ 子供の目で本質をつかむ (平成25年7月)
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