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■野口レポート

No.202 子供の目で本質をつかむ (平成25年7月)

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4コマ漫画の「コボちゃん」は毎回楽しく読んでいます。作者の「植田まさし」さんは、自分の感性を2人の子供(コボちゃん・ミホちゃん)に置き換え、物事の本質を見事につかんでいます。相続問題の本質をつかむには固定観念のない目を持つことです。
40歳独身の長女Aさんからの相談です。父親が亡くなり、相続人はAさんと配偶者の母親との2人です。遺産は家族が同居している自宅の土地建物です。母親は認知症を発症し施設に入っています。基礎控除の範囲なので相続税の課税はありません。
10か月以内に手続きをしなければと言われ、どこへ行ったらよいのか、誰に相談したらよいのか分からず悩んでいました。まわりの人にあそこへ行ってみたらと言われたそうです。Aさんは相続税申告期限と相続手続きとを混同しているようです。
相続税は相続開始後10か月以内に申告し、現金一括納付が原則です。相続税が課税されないAさんには申告義務はなく、遺産分割や不動産などの相続手続きに期限はありません。
固定観念を持った大人の目で見てしまったら、「認知症の母親に成年後見人を立て遺産分割をし、相続手続きを進めましょう。」とアドバイスしてしまいます。


固定観念を捨てると、相談の本質が見えてきます。「このまま放っておきましょう」これが私のアドバイスでした。Aさんの目的はこの家に住み続けることだと分かったからです。
何もしなければ2人の遺産未分割共有状態です。だが、Aさんが住み続ける分には何の影響もありません。このままでもAさんの目的は十分達成できます。母親が亡くなれば相続人はAさん一人です。その時に相続手続をし、自宅をAさん名義に移せば済むことです。
なぜ相続は苦労するのか、これも純な目で見ると本質(日本人の財産構成が民法と税法に合っていない)が分かってきます。
民法は相続分を決めています。遺産が現金なら多少揉めても何とかなります。民法通りに分けることもできます。ところが亡くなる人の財産構成は不動産などの分けにくい財産が多くを占めています。これが遺産分割を難しくし揉める原因にもなっています。
それでは税法はどうなのか、相続開始後10か月以内に現金一括払いが原則です。物納も今は難しくなりました。遺産が現金なら相続税など怖くありません。即、現金一括払いです。現在の最高税率は50%です。いくら取られても半分は残ります。
民法や税法は財産構成に合わせてはくれません。ならば財産構成を民法や税法に合わせるしかありません。つまり相続対策の基本は「お金(現金)持ち」になることです。「簡単なことを完璧にやる」相続対策はシンプルであるべきことに気付きます。物事は子供の目で本質をつかみ、大人の目で進めていくことが大切です。

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