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■野口レポート

No.217 平等に不平等を持ち込む (平成26年10月)

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現在の相続制度(均分相続)は平等ですが公平ではありません。だが、平等と公平はどこが違うのか解かりづらいものです。
それではお正月のお年玉をイメージしてみましょう。袋のなかには高校生の長男が1万円、中学生の長女が5千円、小学生の二男が3千円、親は年代に相応した金額を入れますよね。文句を言う子はいません。これが公平です。
袋のなかに一律1万円(均分)が入っていたらどうでしょう。それは公平でなく平等です。すなわち公平とは不平等なのです。
人以外の生き物は亡くなればそれで終わりです。ところが人は亡くなると相続が開始します。悲しみに浸る暇もなく、やらねばならない手続きが山積します。特に遺産分割は最大の難関です。
相続人になれる人と相続分は法律(民法)で決まっています。そして、財産分けの方法は次の3通りがあります。
① 「遺言による指定分割」。法定相続に優先します。
② 「合意分割」。話し合いによる分割です。相続人全員が合意すれば法定相続分にこだわらず、どんな分け方をしても有効です。
③ 「調停・審判による分割」。遺言が無い、話し合いもつかない場合は、家庭裁判所による最後の分割方法です。


ある父親が亡くなりました。二男夫婦が2階で両親と同居しながら、1階の店舗で家業を手伝っています。母親はすでに他界し、二男夫婦が父親を看取りました。
相続人は、長男、二男、長女の3人です。長男は家業を二男にまかせ、家を出てサラリーマンです。役職にも就き持ち家もあります。長女の嫁ぎ先はそれなりの資産家です。父親の主な遺産は店舗兼居宅の土地建物です。遺言はありませんでした。
兄と妹は二男に遺産を譲ってくれました。経済の余裕は心の余裕につながります。これで二男は家に住むこともできるし、今までどおり家業の商売も続けていくことができます。
しかし、今回のようなケースは少ないです。もし、この2人が生活に困っていたり、兄弟間に固執があったなら、こうはいかないでしょう。権利を主張されたら、生活基盤の店舗兼居宅を相続するのは難しいでしょう。決まらなければ家庭裁判所による審判です。
相続人の相続分は法律で決まっています。二男の法定相続分は3分の1しかありません。民法は寄与分制度を設けていますが、家業の手伝い、通常の親の世話や介護などが、寄与分として相続分に反映することはほとんどありません。
また、審判官は法定相続分を変えることはできません。最後は法律通りです。平等に不平等を持ち込み、実情に合わせ相続分を公平に変えるには遺言しかありません。そして、それができるのは「被相続人になる人」一人だけです。

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