■野口レポート
No.236 弁護士 大胡田 誠さん (平成28年5月)
主宰している野口塾に、弁護士の大胡田 誠さんにお越しいただき、特別研修をさせていただきました。多くの刑事・民事事件を手掛けている普通の弁護士さんです。ただ、他の弁護士と違うところは大胡田さんが全盲であるということです。
透き通った声から大胡田さんの想いが伝わってきます。研修後は懇親会場へ。途中の公園でプチ花見をし、桜にも触れていただきました。満開の香りが心のなかに広がったことと思います。懇親会にもお付合いくださり、懇親を深めていただきました。塾生たちも大胡田さんから多くの気づきをいただいたことでしょう。
大胡田さんは先天性の緑内障のため12歳の時に両目の視力を失いました。全盲では日本で3人目の司法試験合格者です。普通に考えれば司法試験に挑戦すること自体が無謀です。合格するまでにどんな苦労があったかは計り知れません。
著書「全盲の僕が弁護士になった理由(ワケ)」を読ませていただきました。2度読んだ後は付箋だらけになっていました。講演とあわせ、感じたところをいくつか紹介したいと思います。
◎「見えないからやめておこう」ではなく「見えないなら、どうやったらできるだろう」そんな風に考える癖がいつの間にか身についていた。◎「もう無理だ」と思った時が一番夢に近づいたとき。◎4回目の受験に失敗し、もう辞めるべきかと心が折れかけた時、母は良いとも悪いとも言わず、ただ一言「人生で迷ったときには、『自分の心が温かい』と思う方を選びなさい。」と言ってくれた。自分の心が何を本当に欲しているのか。答えはそこにしかないんだと教えられた。◎全盲の先輩弁護士の言葉です。「弁護士の仕事は、法律に『人格』を載せて売る商売なんだ。」だから君もいろいろな経験をして自分を磨きなさい。ご両親が偉大だったのは特別扱いしないで、ごく普通の子として扱ったことです。家庭には笑いが絶えなかったそうです。このご両親なくして弁護士大胡田 誠は誕生しなかったと思います。
大胡田さんは結婚され(奥様も全盲)2人の子供さんがいます。盲目の夫婦が子供を育てることは並大抵のことではありません。
ご夫婦が子供たちに残したいのが、自分たちの生き方です。「子供たちにとって我が家は特殊な環境かもしれない。将来苦労をかけるかもしれない。でも僕たち夫婦だからこそ見せてやれるものがあると信じている。『だから無理だ』と逃げるより、『じゃあどうするか』と考えるほうが人生は面白くなる。このことを自分たちの生き方を通じて子供たちに見せてあげたい。」素晴らしいですね。
長女は5歳となり、お父さんの手を引いて歩いてくれるそうです。子供たちはご両親の生き方をしっかりと見て、何にも勝る財産を引き継いでいくことでしょう。
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