■野口レポート
No.258 相続税の大バーゲン (平成30年3月)
昭和22年に家督相続から均分相続に相続制度が変わりました。この頃は家制度思考が文化として残っており、長男が同居し親の面倒を見るのは当たり前の話しでした。
家族全員が円形の卓袱台(ちゃぶだい)を囲み夕げについたものです。衣食住にも事欠く貧しい時代でしたが、人の心は今とは比べものにならぬほど豊かでした。時代と共に核家族化が進み、親と同居している人は本当に少なくなりました。
相続税小規模宅地の特例があります。相続で取得した自宅の敷地330㎡までは、更地評価から80%減額してくれる特例です。
配偶者や親と同居している子が一定の要件を満たせば、自宅敷地の評価が330㎡を限度とし80%激減されます。路線価の高い地域では天と地の差になります。まさに相続税の大バーゲンです。
親が1人で住んでいる自宅敷地は、同居していない相続人が取得しても、相続開始前3年以内に自分の家を所有(配偶者も含む)し住んでいなければ、この特例が使えます。俗に言う「家なき子」の相続人です。なら、「持ち家を子に贈与してしまおう。」そして自分は「家なき子」になってしまう、こんなことを考える人が出てくるのは世の常です。租税回避の相続税対策を防ぐため、今年から「家なき子」の要件が厳格になりました。
だが、通常の小規模宅地の特例のなかの特定居住用宅地等(自宅敷地)は健在ですので安心してください。
相続税には次の3通りがあります。
①相続税の課税されない人⇒ 財産が相続税基礎控除以下である。
②申告することで課税されない人⇒ 申告により各特例を使う。
③相続税の課税される人⇒ 特例を使ってもはみ出してしまう。
財産は自宅と預貯金が3000万円前後、これらの層は基礎控除改正前には課税されませんでした。だが改正後は納税義務者が続出しています。課税される相続税は50万円~300万円位です。小規模宅地の特例が使えるかどうかが大きなポイントになります。要件を満たしているなら相続税の申告をし、特例を使うことにより相続税は0円です。ただし税理士の報酬はかかります。
要件とは次の通りです。◎被相続人と同居している相続人が自宅敷地を相続し、申告期限の10ケ月まで引き続き所有し、住んでいること。10ヶ月以内に売却したら特例が吹っ飛ぶので注意が必要です。配偶者が相続したなら要件はありません。無条件です。
この特例は、長年夫を支えてきた配偶者や、同居し親の面倒をみている親孝行息子に与えられるご褒美です。これが小規模宅地の特例の本来の姿ではないかと思います。
特例を受けるには、相続開始後10ケ月以内に遺産分割を成立させ申告をすることが原則です。親孝行息子が自宅を相続し、円滑に申告ができるよう、公正証書遺言でサポートしておきましょう。
相続実務に99%はありません (平成30年2月) ≪前へ次へ≫ 「3ケ月」前と後では天国と地獄 (平成30年4月)
Copyright(C)Alfa Noguchi. All rights reserved.