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■野口レポート

No.132 遺言執行者 (平成19年9月)

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遺言が公正証書でも自筆証書でも、受遺者(遺言で財産をもらう人)が相続人で、「相続させる」との文言なら、不動産の場合は単独で名義変更ができます。だが、預貯金等の名義変更は遺言執行者がいなければ、銀行は相続人全員の承諾を求めてきます。
あるご主人が亡くなりました。子どもがいないので相続人は奥様とご主人の兄弟姉妹です。ご主人は遺言(全財産を妻○○に相続させる)を残していました。法的要件を満たした立派な自筆証書遺言です。ところが遺言執行者が指定されていません。ご主人側の兄弟姉妹にハンコを下さいとは言いづらいものです。
遺言執行者は弁護士などの法律家とは限りません。成り行きから私が遺言執行者になることになりました。家庭裁判所に選任を申し立て審判が下りました。遺言執行者としての実務は初めてです。
先ず相続人全員に以下の通知を送ります。
1、遺言執行者就任通知書 2、自筆証書遺言写し 3、検認証明 書写し 4、遺言執行者選任審判謄本写し 5、財産目録。
いよいよ遺言の執行です。銀行や担当者によっては、相続手続の対応に差があります。公正証書でない自筆証書遺言は、遺言執行者がいても相続人全員の署名押印(承諾)を求められることがあるとの話しでした。それでは何のための遺言か分かりません。


公正証書遺言と自筆証書遺言との違いは何かを考えました。意思能力と自筆が証明できれば、公正証書と何ら変わらないではなかと思いました。亡きご主人は几帳面な方で日記を書いておりました。日記の文面を見れば、遺言作成当時の意思能力に全く問題はありません。筆跡も間違いなく同じです。拒まれた時は日記を見せればと、受遺者(奥様)と一緒に心して銀行に行きました。
「某都市銀行」の対応です。担当の女子行員さんが一通り書類をチェックし、丁寧に対応してくれました。「遺言執行者の方がこのように一緒に来てくださることはあまり無いんですよ」とお礼を言われました。日記も不要でスムーズに手続完了です。
次は「某メガバンク」です。要旨を話すと応接室に通されました。
テレビ電話が真ん中に置いてあります。係が本部の相続処理センターを呼び出します。終わったらこのボタンを押して下さいと言って外へ出ていってしまいました。室には受遺者と私の2人です。
先ず受遺者がテレビ電話で面接をします。次に私に変わります。相続に精通しているセンターの若いおねえさんが画面の向こうでテキパキと書類の書き方などを指示してくれます。終わってボタンを押すと担当者が書類を取りに来てくれ手続完了です。
責任の重さとプレッシャーを感じながら、初めて経験した「遺言執行」でした。そして新たな発見と多くのことを学ぶことができました。相続は机上の勉強だけでなく、身を持って体験し、体で覚えるものだと改めて思った次第です。

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