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■野口レポート

No.133 無を使い切る (平成19年10月)

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自分さえ儲かればいい、自分さえ楽しければいい、自分さえよければいい。政治、経済、教育、家庭、世相の荒みの根元は、全てこの「自分さえ」にある気がします。
私のオフイスの近くに一番汚い所があります。歩道の脇にあるゴミ置場です。自分さえよければと、ルールを守らない人がいます。カラスにとって絶好の漁り場となり、ゴミが散らかり悪臭もただよっています。ここまで汚れると掃除する人もいません。
朝の清々しい気分がいっぺんに壊れます。張り紙をしても全く効果はありません。割れた窓ガラスの理論を思い出し、毎日「徹底的に掃除」することにしました。一番汚いところを、地域で一番きれいな場所にしてしまいました。1年が経過し奇跡が起きました。
いくら張り紙をしても治らなかったルール違反がピタリと止まり、今はチリひとつありません。これは無を使い切ったからです。
早朝、オフイスの周囲を掃除しています。塵取りや箒があるから掃除ができるのです。終わった後は、きれいに水洗いをし、塵取りさんや箒さんに「今日も掃除ができたのは皆さんのおかげです。ありがとうございます。」と声をかけます。これも無です。
定期的に近くの医院へ健康管理に通っています。玄関で患者さんの「履物の向きを変えて」おきます。これも無です。


新幹線で検札の車掌さんに「ごくろうさまです」と声をかけます。
声をかけられれば気持ちよく仕事ができます。これも無です。
相続の相談に見えるお客様は皆不安を抱えています。大丈夫ですよと「笑顔」で声をかけます。これも無です。
感謝、気づかい、笑顔、掃除、整頓、これらは全て「無」です。無とは、「お金のかからないもの」、その気になれば「誰にでもできるもの」です。無は人間力を高める最高の手段です。
足もとのゴミひとつ拾えない人、窓ガラスも拭けない人、履物も揃えられない人、感謝のできない人、この無を使い切れない人が、いくら有(金)を使っても会社の発展はありません。
資産家の相続で欲得を通し、争って大金を得た相続人が、わずか数年で無1文になってしまう。よくある話です。親の財産をもらうのは当たり前だと思っています。感謝の気持ちと譲る心がありません。無を使いません。だから無に戻ってしまうのです。
損得勘定がしみつき、自分の「得」だけで生きている、「徳」のない人や企業がいます。無を使う楽しさを知らないのです。無は天に預ける無形の預金(徳)です。積み立てた徳はいつの日か必ず天から自分に還ってきてくれます。
笑顔ができる、ありがとうございますと言える、足もとのゴミを拾える、人の幸せを喜べる、無を使い切れる人が一人でも増えていけば、世の中は必ず変わります。タライに垂らした一滴の水は、目には分かりません。だが、確実に一滴は増えています。

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