■野口レポート

GSから転業し、未知の分野である相続特化型不動産業に挑戦し、開拓を重ねてまいりました。人は、いい時にGSをやめたね。華麗なる転身などとも言ってくれました。
だが、本人は新たな世界で死に物狂いでした。ネットワークも経験もなく、試行錯誤のなか手探り状態でした。今思えば綱渡りのような日々でした。多くの人との出会いに支えられ、一歩一歩を積み重ね、今日にたどり着くことができました。
五十路前に180度の転業は苦悩の決断でした。だが、今は本当によかったと思っています。相続は、法律や財産に人の心がからむ奥の深い仕事です。また、財産と幸せが同じ方向を向くとは限りません。ここを見誤ると相続人を不幸にしてしまいます。
相続の現場では本に書いてないことが平気で起こります。法律や税金だけでなく、いかに多くの相続にかかわったか、かかわっていくか、プロとしての力量はその場数で養われます。
ひとつ終わるとまた一つ、更に難しい相談や仕事が入ってきます。リングに上がったら逃げることはできません。大変だ、いやだ、と思ったら、その瞬間に負けてしまいます。自分を信じ、パートナーを信じ、相続人の幸せのため、ひたすら頑張るだけです。


相続ビジネスの報酬は財産の大きさに比例してきます。大きな仕事でも、小さな仕事(少ない報酬)でも「常に最高の質を提供していく」これが真のプロフェッショナルです。
今まで手掛けたもので一番大きな仕事は、遺産総額20数億円の土地資産家さんの相続コーディネートでした。一番小さな仕事は、遺産分割に積み忘れた銀行預金20万円の相続手続きです。
荷物(財産)の大きさは違っても、相談者にとってその重みは同じです。相手の痛みを理解できれば、20億円の仕事も20万円の仕事も同じ気持ちで取り組むことができます。
「相続の 研修と実務を通し 自分を磨き 人のお役に立ち 社会に貢献する」、役員を務めているNPO法人相続アドバイザー協議会の理念です。平成12年4月の創設以来、この理念は寸分たりとも揺らいだことはありません。
死は譲ることができません。相続は100%の人に起こります。
コンサルタントは相談者に育てられます。多くの経験を積むためにも、小さな仕事に感謝し、親身になって対応していく姿勢が大切です。利益にならないからと、小さな仕事を粗末にしていたら、プロとしての力はつきません。
早いか遅いか、どんな人でも人生のなかで一度は輝くときがあります。顧みれば61年、咲かずに枯れると思いきや、この歳になって咲いている自分がいます。ありがたいことです。天職を与えてくださった神様に感謝です。