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■野口レポート

No.142 潮目が変わる (平成20年7月)

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午前中は潮が東に流れ平家が有利でした。午後になると潮の流れが逆になり、こんどは源氏に有利となりました。ご存じ、源氏と平家の壇ノ浦の戦いです。平家はこの戦いに敗れ滅びました。
昨年の後半から地価に変化を感じました。今年に入りその兆候は肌で感じるほどになりました。原油が高騰し資材や物価があがりました。しかし給料は上がりません。分譲(戸建・マンション)は売れなくなります。業者は土地の仕入れを控えます。買手が減れば土地は下がります。銀行が融資を絞ればなおさらです。
地主さんの財産構成は土地が占める割合が圧倒的です。大地主さんになれば相続税率は50%になります。現金預金1億円、土地が9億円あれば、5億円の相続税の納税義務が生じます。しかも、10か月以内に現金一括払いが原則です。物納は制度としては残っていますが、先般の大改正で限りなく難しくなりました。
横浜にお住まいの地主Aさんから相続の相談を受けました。お父様の年齢や健康状態、そして推定相続人の構成と資産状況を考えると、お父様の生前に土地を売却し、納税資金や分割資金を確保しておくことが最善の策であることをアドバイスしました。
運よく、あるデベロッパーから高値で買いの打診が入りました。ここは迷わず売ることをアドバイスしました。


ところが、あそこの地主の土地はいくらで売れたとか、○○万円でなければいやだとか、目先の視点でしか考えてくれません。
エイと決めて土地への固執を断ち切ることが決断です。結局Aさんは決断できず、せっかくのチャンスを逃しました。
地主さんには木を見て森を見ない人がいます。もしAさんにアドバイスを受け入れる素直な心と決断力があったなら……。
あとで後悔するのは目に見えています。説得できなかった自分の力不足が悔やまれます。
数カ月後、不動産の潮目が完全に変わりました。建築費の高騰などで、高値で土地を仕入れたら事業の採算が取れません。デベロッパーはよほど良い土地でなければ希望価格では買ってくれません。まして相続開始後では足元をみられ買いたたかれます。
今年も公示地価は上がりました。7月発表の路線価も上がるでしょう。土地の時価と路線価(相続税評価)にはタイムラグがあります。潮目が変われば、相続税評価に対し地価が下がる逆転現象が起きてきます。
「取りあえず物納」のできなくなった今、評価と実際の価値が乖離している土地や、地価と路線価の動向によっては、腹七分目で生前に売却してしまうことも効果的な相続対策です。
「潮目が変わる」、状況が一変し、攻勢、守勢が一瞬にして逆転することを言います。企業の経営者や土地資産家は、いつ潮目が変わってもいいように、日頃から準備をしておくことが肝要です。

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