■野口レポート
No.157 天と地の差にならないために (平成21年10月)
相続が開始(人が亡くなる)するとどうなるか、法律(民法)では相続人になれる人と、相続分を決めています。相続人が権利を主張したら法律通りになります。
相続人になれる人は次の2種類しかいません。一つは血族相続人(法定血族「養子」を含む)です。被相続人と血のつながっている人です。この血族相続人には順位があります。
第1順位は子供です。子供がいなければ第2順位の父母等の直系尊属が相続人になります。子供もいなく、すでに父母等も他界していたら、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。
二つ目は配偶者相続人です。第1順位から第3順位の血族相続人との組み合わせで、相続分は変わりますが、配偶者はどの立場でも常に相続人となります。
人が亡くなると相続が開始します。亡くなった瞬間に、その人の有する一切の財産は、血族相続人、配偶者相続人に法定相続分で移転し、遺産分割未了共有となります。この未了共有の遺産を各相続人の確定した財産にするための話合いが遺産分割協議です。相続人全員が合意すればどのような分けかたをしても有効です。
人の死は100%起こる公平な事実です。高齢者社会を迎え、相続の相談や仕事は増え続けていくでしょう。
相続の相談を受けるにつけ、思うことがあります。なぜもう少し早く相談してくれなかったのか、なぜ親が元気なうちに来てくれなかったのか、本当に残念でしょうがありません。
ある父親が再婚しました。将来の相続で問題が出ないようにと、後妻には子供のいない人を選びました。父親には子供のAさんがいます。Aさんは父親の再婚を軽く考えていました。
Aさんの父親が亡くなりました。父親所有の全財産の2分の1はその瞬間に配偶者相続人である後妻さんに移ってしまいます。
配偶者相続人の後妻さんと、血族相続人のAさんとで遺産分割をし、遺産をAさんに移しておけばよかったのですが、未了共有のまま後妻が亡くなりました。Aさんは継母の相続人ではありません。
Aさんが2分の1以上の財産を取得するには、父親の相続人(後妻)の相続人である兄弟姉妹と遺産分割の話合いをし、全員の合意を得なければなりません。人情からすれば父親の遺産は、継母の面倒をみてきたAさんが相続するのは妥当な話です。
しかし、財産は亡くなった瞬間に移り、あとは血のつながりです。法律に常識と人情は通用しないのです。Aさんは、精神的・経済的・時間的に何倍もの苦労を強いられます。
早く相談してくれれば対応は簡単でした。遺言を書いてもらうか、Aさんと継母が養子縁組しておけば済んだことです。法務対策は親の目の黒いうちが勝負です。目が白くなってからでは何にもできません。後悔先に立たず、前と後では天と地の差になります。
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