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■野口レポート

No.161 税制と不動産は生き物 (平成22年2月)

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「このままでは相続税が大変ですよ、借金をして賃貸マンションを建てましょう、ほらこんなに相続税が減りますよ。」と、コンサルタントの税理士先生。
「この収支を見てください。将来まで安定した収入が見込めますよ。」と、建築会社の営業マン。
「お金の心配はいりません。土地さえあればいくらでもお貸ししますよ。」と、銀行の支店長。
土地が右肩上がりの相続(節税)対策は、この人たちの独壇場でした。そして、バブルとともに土地神話は崩壊しました。後に残ったのは、デフレせぬ借金、デフレする不動産、賃料は下落し、空室も出る始末、あのシミュレーションは何だったんだ!
こんなはずではと提案してくれた先生。請負った建築会社はすでに倒産。貸し込んだ支店長は転勤し、どこにいるか分からない。
「くやしい、うらめしい」だが、この人たちを恨んではいけません。最後に決めたのは自分です。これが自己責任というものです。
平成22年度税制改正で相続税の「小規模宅地評価減制度」が改正されました。手品師は観客の目を表に引きつけておき、裏側で細工をします。気がつけばパッと花が咲き、拍手喝さいです。
子ども手当や暫定税率に目を引きつけられ、気がつけば小規模宅地の改正で一気に節税封じ、財務省はしてやったりです。


この特例は要件を満たせば、居住用の240㎡までの土地の評価を80%引きにするとの特例で、まさに相続税の大バーゲンです。
親が所有する一棟の賃貸マンションの一室を、親が居住用として使用し、特例の要件を満たせば、マンション全体の240㎡までの土地評価が80%引きになります。ここに改正が入りました。
都心の一等地でマンション敷地70坪を仮定してみましょう。
評価が坪/1,000万円なら、7億円の評価です。しかし、小規模宅地の要件を満たせば、評価は1億4,000万円に激減します。
これを相続対策に使った人がいます。住みなれた土地を売り払い、都心のマンションを1棟買いし、一室に住み、これで相続税はひと安心。しかし政権交代、あっというまに税制改正、大きな節税効果は一瞬にして吹っ飛びました。
相続税を減らしたい、ただそれだけで、なれぬ都会暮らしを選んでしまった人。そんなことより、住みなれたところで、明るく、楽しく、一生を過ごすほうが幸せだったのではないでしょうか。
税制と不動産は生き物です。節税対策が裏目に出てしまうことはたくさんあります。そして、相続の開始(死)は定めることができません。まして、節税対策には既得権がありません。
また、節税と幸せは必ずや比例しません。発想を原点に戻し、家族の幸せは何か、目的をしっかり見据え、目的に合った手段を選び、結果として相続税が減る、これが相続対策のあるべき姿です。

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