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■野口レポート

No.177 気になる相続税法改正の行方 (平成23年6月)

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昨年12月に政府税制調査会の2011年度税制改正大綱が発表されました。従来なら事実上これで決定です。
相続税は5000万円に相続人1人あたり1000万円を加算した総額が基礎控除です。これを超えた部分が課税対象となります。
改正案では5000万円→ 3000万円、相続人1人あたり加算される控除額も1000万円→ 600万円となります。
相続人が配偶者と子2人の場合→ 遺産が8000万円までは課税対象となりません。改正案では大幅に引き下げられ、4800万円までとなります。4月1日以降の相続から適用の予定でした。
ところが、2010年7月の参議院選挙で政権与党の民主党が大敗し、過半数を割ってしまいました。俗に言う衆参ねじれ国会です。税制改正も野党の協力が得られず棚上げになっていました。そして3月11日の東日本大震災です。
政府は大震災の対応に追われ、それどころではありません。相続税関連法案など、どこかに行ってしまった感があります。
4月1以後に相続が発生し相談を受けました。遺産は家1軒、預貯金と生命保険です。成案していたら約180万円の課税です。庶民にとっては大金です。不利益不遡及の原則がどう判断されるか、遡及しなければ民主党大敗のおかげで相続税はセーフです。


これまでは相続に消極的であった一部専門家も、今回の相続税増税の気運に活発な動きを見せています。
バブル期に営業ツールとして、さかんに使われた節税対策もまたぞろ復活し、「借金させて建てさせる」ハウスメーカーの無料セミナーが、著名な先生をむかえ盛んに行われています。なぜ無料なのか、この不思議に気付かない参加者でどの会場も満員です。
借金しても相続税は減りません。節税効果は借金で得た現金を固定資産(アパート)に組み替える資産組替に生じるのです。
また、アパート経営も現実はそう甘くありません。維持管理を続けていくには経営努力が必要です。経営者になれない大家さんでは「湯でガエル」になってしまいます。
相続税改正法案は成立するのか、凍結となるのか、修正し出なおしか、現時点では確実な情報が入ってきていません。だが、いずれにせよ増税の方向でいくと思われます。
もし今回は増税が見送られても、来年度は分かりません。この時期に発生した1次相続でのポイントは、2次相続で増税が予想される配偶者の相続分を考慮した遺産分割です。
相続税増税は、多くのメディアが取り上げ関心も高まり、相続セミナーも盛況です。だが、節税対策は、使い方を誤ると遺産分割や相続税納税を難しくしてしまう副作用が生じることもあります。
分割対策、納税対策、節税対策、この対策のうち、何を優先させるかを見極め、バランスを考えた相続対策が大切です。 

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