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■野口レポート

No.184 99%は半分と心得よ (平成24年1月)

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数年前の話です。ある相続のコーディネートを依頼されました。相続人は兄弟姉妹が3人です。遺産のなかの不動産の価値をめぐり、相続人の意見がなかなか合いません。
不動産の価値を公平にアドバイスし、ようやく相続人に理解していただきました。難航した遺産分割も苦労の末まとまり、いよいよ明日は、司法書士・税理士の同席のもと遺産分割の調印です。
夕方、相続人の一人から電話が入りました。取引先の銀行員に話をしたら「それでいいのですか」と言われたそうです。
この銀行員に不動産の価値や、今までの経緯や苦労など知る由もありません。ここで話が壊れたら、今までの苦労は水の泡となります。久々に寝つきの悪い夜を過ごしました。
銀行員の「ひと言」は全くの想定外でした。このひと言で遺産分割の調印は延期となりました。だが、もう少し苦労をしろとの「天の声」と自分に言い聞かせ、この事実を受け入れました。数日後、代償金の調整で何とか収まり事なきを得ました。
次は地主さんの相続です。地主さんは財産のなかに土地が占める割合が圧倒的で、お金持ち(現金)ではありません。
相続税は10か月以内に申告し、現金での一括払いが大原則です。物納は制度としては残っていますが、平成18年の大改正で要件が厳格となり、生前の準備なくして現実にはできなくなりました。


延納も決して甘くありません。億単位の延納は途中で行き詰る可能性があり、相続人は大きなリスクを背負うことになります。
相続の専門家を名乗る人は多くいます。だが、兄弟姉妹の糸を切ることなく遺産分割を軟着陸させ、土地を換金し膨大な相続税を期限内に現金一括納付させることができ、初めて相続の玄人(プロフェッショナル)と言えるのではないでしょうか。
ある地主さんの相続をコーディネートしました。配偶者相続人が主導権を握っていたので、遺産分割はもめることなく合意しました。納税資金の土地売買契約も終わり決済を待つのみです。
ところが境界確認書にハンコを押すと言っていた隣接地主が、態度を急変させ、50年前の遺恨を持ち出し、土壇場でハンコを押してくれません。決済は3日後に迫っており胃が痛くなりました。
やむなく契約解除せざるを得ませんでした。99%目前であった相続税現金一括納付がハンコひとつで吹っ飛びました。
スポーツでも、土俵際でのうっちゃり、9回裏ツーアウト後の逆転ホームラン、詰めの甘さや一瞬の気のゆるみで全てがパァです。
相続や不動産の仕事も99%は半分だと心得て、取り組むことが肝要です。ホッとしてしまうと足元をすくわれます。
ちなみに不動産や総合的コーディネートで報酬は頂戴しますが、一連の作業のなかで、一番エネルギーを消耗する遺産分割の立ち会いは、弁護士法72条の規定があり全てサービスです。

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