■野口レポート
No.281 相続とセカンドオピニオン (令和2年2月)
ある大地主の二男から相談を受けました。父親が亡くなり5ケ月が過ぎたのに、本家の長男から何も言ってきません。危機感を持った二男が長男のところへ私を連れていってくれました。
話を聞くと遺産は15億円あります。7億円もの相続税を納付しなければなりません。土地はあるが現金がありません。このままではとても相続税が納税できません。税理士の動きを見ると大地主の相続ができるレベルではありません。
長男を説得し税理士を代えてもらうことにしました。限られた時間は5ケ月しかありません。すぐに概算納税額を算出し納税のため売却する土地の選択に着手しました。幸いなことに1700㎡の広大地を駐車場にしており、これが相続税の原資の要となりました。
この土地をとりあえず遺産分割協議から外し他の財産を遺産分割します。取得する財産が決まれば各相続人の納税額が出てきます。遺産分割協議から外してあった土地を各相続人の納税額で按分し、その割合で共有相続しデベロッパーに売却すれば、各人に納税額相当分の資金が入り、相続人全員が現金一括払いで相続税の納付ができます。
相続税には「連帯納付義務」この時代遅れの理不尽な制度がまだ残っています。払えない相続人がいたら、すでに自分の相続税を払い終えている他の相続人に税務署は納付を求めてきます。相続税納税は個人プレーでなく全体で考える必要があります。
次は行きつけの寿司屋の大将からの紹介です。常連客の地主Aさんの相談に乗ってやってほしいとのことです。
3ケ月前にAさんの父親が亡くなりました。確定申告をお願いしている会計事務所に相続をお願いしました。が、進ちょく状況の報告もなく不安な日々を過ごしており、寿司屋にきては酔った勢いでグチを言っていました。それを聞いた大将が私に振ってくれたのです。
Aさんを通し会計事務所に進ちょく状況を確認したところ、進展がなく相続人の確定作業すらしていません。税理士を代えることをアドバイスしました。残された時間は7ケ月しかありません。
父親は公正証書遺言を残していました。が、不動産の特性を全く考慮していません。遺言を執行してしまったら多くの不具合が生じてしまい相続人全員の不利益になってしまいます。
1000㎡の一団の土地があります。遺言どおりに分割してしまうと筆と利用実態が一致しません。道はあるが建築基準法上の道路ではありません。一度1000㎡の土地を未分割共有状態で一筆に合筆し、中央に位置指定道路を入れ、他は利用の実態に合わせ分筆し、各相続人が相続する必要があります。遺言を使わないで遺産分割協議で分割することを提案し了解を得ました。
普通の税理士は相続税の計算をして申告をすることが自分の仕事だと思っています。相続の税理士はいかに10ケ月以内に相続税を一括納付させるかを考えています。今やセカンドオピニオンは医療の世界では普通に行われています。もし相続税申告で疑問や不安を感じたら、「第2の意見」を聞いてみることも必要ではないかと思います。
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