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■野口レポート

No.138 財産と幸せは比例しない (平成20年3月)

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「財産と幸せが比例するとは限りません」この認識を持つことは相続のプロとして重要です。本質を見誤ったコンサルをしてしまうと、相続人を不幸にしてしまいます。相続人の幸せを心から考えたとき、目に見えない財産が見えてきます。
ある女性(Aさん)から相談を受けました。法律の専門家や行政の相談会などを転々としたのですが、解決の糸口が見つからず悩んでいました。
Aさんのご主人は土地資産家の長男です。母親(本家は女系)は既に亡くなり、跡取り息子のご主人は、それなりの不動産を相続しています。不幸なことに、ご主人が父親より先に亡くなりました。
子供がいないので、相続人はAさんとご主人の父親です。遺言は無く、相続分は配偶者のAさんが3分の2、直系尊属の父親が3分の1となります。だが、相続人が合意すればどのように分けても有効です。
遺産分割にご主人の兄弟が口を挟んできました。預貯金等は相続してもよいが、先の母親の相続で長男(ご主人)が取得した土地や建物は父親に相続させろとのことです。
3分の2の権利や、本家の嫁としての想いもあり、Aさんの心は複雑です。義兄弟は連日のように遺産分割を迫ってきます。どうしてよいのかAさんは少々ノイローゼ気味です。


三つのことを考えました。複数の義兄弟が同じ敷地内に住んでいること、ご主人が残した相続財産のルーツは本家筋の財産であること、Aさんの歳はまだ50代前半であること、これらを併せ考えると問題の本質が見えてきます。
法律を前面に出し権利を主張すれば、3分の2の財産は取得できます。しかし、義兄弟との仲は最悪となります。同じ敷地内に住みながら、生涯いがみあって暮らしていかねばなりません。
毎日いやな思いをして生きていくのと、楽しく生きていくのでは、天と地の差になります。ここは譲りましょうとアドバイスをしました。
大切なのはこれからの人生です。10年20年と長い年月を明るく楽しく暮らす。この時間をお金に換算したら億の財産に値します。「目に見える財産でなく、人生(幸せ)を取りましょう」この一言にAさんはハッとし、一番大事なことに気付いてくれました。
どこへ相談しても誰もそんなこと言ってくれなかったと、最後は涙なみだです。これまでの苦労や想いが一気に出たのでしょう。
数日後Aさんから遺産分割協議書にハンコを押しましたと、報告がありました。フッ切れたAさんの声は弾んでいました。
ほとんどの専門家は「財産と幸せは比例する」これを前提とし、仕事をしてしまいます。だが「財産と幸せが同じ方向を向くとは限りません」私はいつもこのことを心に留め置いて仕事をしています。
相続は譲った人が幸せになります。笑顔が戻ったAさんは、これからの自分の人生を、幸せに歩んでいかれることでしょう。

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