■野口レポート
No.189 セカンドオピニオン (平成24年6月)
土地が数十筆もある大地主さんの、相続税の計算を10人の税理士にお願いしたら、十人十色で同じ数字はありません。遺産が全部現金なら同じ数字が出るでしょう。
相続での土地の評価は難度が高く、いかに減価要因を見つけるか、税理士の評価のしかたで、相続税が大きく変わってきます。
5年以内の申告書をチェックし、払い過ぎた相続税を取り戻す、更生の嘆願や請求がビジネスになる事情もここにあります。
大地主さんには顧問の税理士がついており、直接に相続の依頼を受けることは少ないです。遺産が20億30億の大地主さんの相続は、セカンドオピニオンとして相談を受け、それから仕事をお引き受けすることがほとんどです。
行きつけのお寿司屋さんに、常連客で大地主のMさんがいます。父親が亡くなり相続真っただ中です。相続開始から2か月になるのに会計事務所の動きが鈍く、前に進んでいません。そんなMさんの不満を聞いた寿司屋の大将が私を紹介してくれました。
Mさんからの依頼を受け、先ず税理士を相続に精通したパートナーに変えていただきました。即、相続人の確定、現地調査、相続税の概算、測量など、パートナーの各専門家に指示し、併せ納税のために売却する生産緑地解除の準備に入りました。
ひとつ大きな問題がありました。不動産の特性と相続税の納税を考慮していない公正証書遺言があるのです。
利用の実態と土地の筆が同一ではありません。遺言を使ってしまうと、所有と実態が違ってしまいます。また、この指定分割では円滑な納税ができない人が出てきます。リスクを説明し、遺言を使わず、遺産分割協議による財産分けをお願いしました。
土地は所有者が同じでなければ合筆できません。遺産分割の前に被相続人名義で合筆し、利用の実態にあわせ新たに分筆しなおし、分割協議で各相続人に相続していただきました。
また、納税のため売却する生産緑地は各相続人の納税額で案分し、共有で相続登記しデベロッパーに売却しました。こうすれば相続人全員が相続税を現金一括納付することができます。
申告だけを考えれば、遺言を使ってしまった方が楽です。だが、それでは相続後の土地に憂いを残します。相続人様の幸せのため、あえて苦労を選ぶのもプロの道です。
顧問の税理士が相続に精通していたら、そこへお願いすることがベストです。しかし、不動産を熟知し地主さんの相続を総合的にとらえ、仕事のできる税理士はごくわずかです。
医療でも他の医師の意見を聞いてみる、セカンドオピニオンの時代です。もし、相続の進展に不安や疑問を感じたら、相続のセカンドオピニオンに意見を聞いてみることも必要です。地主相続は外科手術です。執刀医を誰にお願いするかで運が分かれます。
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